国際シンポジウム会場で、参加者からのご質問に対して、講師の皆様からご回答いただけたものについて掲載します

質問内容は多岐にわたり、ご参加いただいた皆様の関心の高さが伺われます。質問内容を1~12に分類して掲載します。

質問内容の分類:
1. アーバンフォレスト 2. 街路樹 3. 樹木管理業者技術 4. 気候変動 5. コミュニティ 6. 樹木 7. 樹木データベース 8. 樹木リスクマネジメント 9. 植栽基盤 10. 都市樹木 11. 都市緑化 12. その他 

注:〔 〕は質問のあった会場 ( )は回答者名

(シアーズ氏)…イアン・シアーズ氏
メルボルン市役所 アーバンフォレスト・グリーンインフラストラクチャ担当部長

(スマイリー博士)…トーマス・スマイリー博士
バートレット樹木調査研究所上級研究者およびクレムソン大学客員教授

(飯塚氏)…飯塚康雄氏
国土交通省国土政策技術総合研究所
社会資本マネジメント研究センター
緑化生態研究室 主任研究官

*一部、街診協によるまとめ、講演からの引用も含みます

1.アーバンフォレスト(概念、政策立案、樹種等)に関するQ&A

Q1〔東京〕 アーバンフォレスト政策を先進的に取り組んでいるメルボルン市、北米では、この取り組みはすでに一般的になっているのか? それともまだ限られた都市だけなのか? 日本で取り組んでいる都市はあるのか?

A (街診協まとめ) アーバンフォレストの概念は古く1965年にカナダのトロントの学者が提唱し、都市の森林の、レクリエーション的価値、アメニティー的価値に加えて環境的な価値があるとしたのが始まり。その後、ISAや米国森林局のサポートでアメリカの都市政策に影響を与え、1970年代にヨーロッパにも広がりました。1995年以降、サステナビリティの考え方がプラスされています。メルボルンは当初はヨーロッパから学びました。ですからメルボルンが最初ではないわけです。現在、樹冠率の目標値を設定して行動している代表的な都市として、フィラデルフィア、サンディエゴ、ニューヨーク、バンクーバー、オタワ、トロントなどがあり、この考え方は世界の潮流になりつつあります。

A (飯塚氏)アーバンフォレスト政策としては、地方公共団体による「緑の基本計画」がある。緑化目標としての緑被率なども設定されている。

Q2〔福岡〕 Urban Forestry sounds like silviculture implemented in and around urban area. But, today’s topics focus on urban tree management. Basically what is the definition of Urban Forestry? Is it include silviculture or excluded?

A (シアーズ氏) アーバンフォレストは、ご指摘の通り、都市の緑地と周辺の樹木や林地を合わせた範囲が対象です。アーバンフォレストは、レクリエーション的価値、アメニティー的価値、サステナビリティなど、環境的な価値提供を目的に管理されます。

Q3〔福岡〕 メルボルン市のアーバンフォレスト政策を進めるうえで、樹木の持つ様々な機能を市長や議会にきちんと伝え理解し協力することが重要と思いました。議会に理解をしていただくのにどのような活動を行政側でされてきたのか具体的に教えてほしい。

A (シアーズ氏) 木がもたらすメリットを科学的根拠をもって示す取り組みを行ってきました。また、今やらねば手遅れになると将来に対する責任を問うてきました。メルボルンが快適で素晴しい街であり続けるために必要な取り組みであるという情報の発信により、市民からも賛同が得られました。そのことを議会にフィードバックしていく取り組み、賛同いただける議員の協力、などなど、あらゆる機会を通じての情報発信を5年以上も続け、アーバンフォレスト戦略が市の政策となりました。

Q4〔東京〕 今現在アーバンフォレスト政策を進める上での課題は何ですか?

A (シアーズ氏) 継続することです。100年後を見据えての計画ですから途切れたら意味がなくなります。市民がいつまでも関心を持ち続けるための手立てを打ち続けなくてはなりません。そのために常に世界の最新データと課題対策手法を学び続ける必要があります。行政トップが代わって方針が変わらないように、市民の関心・要求がアーバンフォレストに向かうようにし続けなければなりません。

Q5〔東京〕 アーバンフォレスト政策の中でアーバンフォレストは樹木の種の5%、属の10%、一つの科で20%で構成するとあるが、数値をこのように設定したのには何か根拠があるのか。

A (シアーズ氏) アメリカの学者が基準を設けた。メルボルンではそれを参考にして、学者の言っている数値よりも少し設定を下げて基準を設けた。

Q6〔東京〕 街路樹の樹種多様性が大切ということで、種の5%、属の10%、科の20%という基準がありましたが、何の樹木をどこに配置するかはどのような仕組みで決められているのでしょうか。

A (シアーズ氏) 樹木適性を考慮しなければなりません。樹種特性は専門家やコンサルタントなら知っています。ガイドブックも多く作られています。土地、日照、交通などの生育環境条件、目標樹形、病害虫耐性、維持管理頻度など多くの条件を考慮しながら、しかも同一種とならないように樹木選択をしていく必要があるわけです。これはプロフェッショナルな仕事です。

Q7〔東京〕 アーバンフォレスト政策策定にあたってはどのようなメンバー構成であったか。パブリックコメントのような意見募集は行ったか。

A (シアーズ氏) パブリックコメントはいつでも取り付けています。

Q8〔東京〕 アーバンフォレストプランを実施するために植栽及びメンテナンスの予算を増やす際に議会でもめなかったか? スムーズに承認されたのか? もし、この緑化に関する予算が非難されるとしたら、他のどのような予算項目との天秤にかけられるか?

A (シアーズ氏) スムーズに議会承認を得られたわけではありません。賛同いただける議員の力を借りましたが時間はかかりました。他の予算と天秤にかけられたことは無いですが、全体予算は決まっています。何を優先するかが重要で、アーバンフォレストが優先順位の高い位置づけになった事で予算化された訳です。反対意見には樹木がもたらすあらゆるメリットを科学的に示して説得しました。

Q9〔東京〕 メルボルンで12月に開催されるアーバンフォレストリーのセミナーはどのように参加できるのですか。メルボルンのアーボリストは何人、何社ぐらいあるんですか?

A (シアーズ氏) 残念ながら12月のセミナーは定員40名のスペシャル講習です。参加費も3,500豪ドル必要となります。アーボリストの総数はゴメンなさい今覚えていません。

Q10〔東京〕 屋上緑化は行政指導もしているが賃貸共同住宅を中心に管理ができず事業者から敬遠されてしまう。打開策はないか。

A (シアーズ氏講演より)メルボルン市ではアーバンフォレスト基金を立ち上げ、実際に開発に関わっているディベロッパーに対して、インセンティブとして資金提供を行っている。

Q11〔東京〕 日本のように相続税対策として樹林地を宅地開発事業者に売却→宅地開発といった問題はあるか。

A (シアーズ氏)もちろんあります。でも開発には規制がありますし、失った樹木分を補填するルールもあります。

Q12〔東京〕 予算確保が重要です。反対意見はありませんでしたか? コストの妥当性をどのように説明、説得しましたか?

A (シアーズ氏)反対意見は多くありませんでしたが、必要性を納得いただくには多くの時間を費やしました。地道に必要性を各国のデータを集めて説いてまわりました。また、議員さんの協力が大きかった。賛同していただける議員さんを通じて、市長に提案いただきました。

2.街路樹(樹種、根系の問題、行政等)に関するQ&A

Q13〔東京〕 比較的狭い道路において、街路樹に適していると思う樹種があれば教えていただきたい(できればハナミズキやヤマボウシ、ソヨゴ以外で)。また、サクラの品種についても、お薦めがあれば教えていただきたい。現在当市においても樹木の大径木化が進んでおり、更新を検討しているが、費用が膨大であり、なかなか手を出せていない。何かアドバイスがあれば教えていただきたい(強剪定は実施していますが、見た目や、その後の管理がなかなかできず…)。

A (飯塚氏)狭小な幅員の場合は、特性として大きく成長しない樹種と、剪定にも耐えて樹形が美しく保たれる樹種の適用が考えられる。大きく成長しない樹種としてはサルスベリなど、剪定に耐えて樹形を作れる樹種としては、トウカエデやクロガネモチなどがあげられる。また、最近では樹冠が広がりにくいファスティギアータ(ケヤキ・ムサシノなど)も使用されている。基本的な考え方としては、設計段階において道路にふさわしい樹種を選定した上で樹種を決定することが望ましく、これが困難な場合には道路幅員に合わせて樹種決定することになるが、この場合には一定期間での更新を当初から見込んでおくことが求められる。

Q14東京〕 街路樹の樹種はどのような基準で選んでいますか? 最大樹高、潜在自然植生、二次林など。

  〔東京、同回答だった質問(Q24)〕  気候変動に対する対応策について具体的な方法などがあれば教えていただきたい。

A (スマイリー博士)気候変動に対応して極端な高温低温と湿度レベルに耐える木を植える必要があります。 気候変動により気象が激化し、多くの樹木が耐えられないほど極端な気候になります。 我々が気候変動に打ち勝つためには、もっと多くの木を植えて維持する必要があります。

Q15東京〕 日本の街路樹はツツジなどの低木植樹が多いのが特徴だと思いますが、どのように思いますか。これが海外都市では少ないのはなぜでしょうか。

A (シアーズ氏)メルボルンでも低木は植えたいと思っています。でも樹冠率を高めるのを優先しているため手付かず状態になっています。今後は景観性を高めるために低木も検討していきたいと思っています。

Q16東京〕 貴研究室で長く取り組まれている街路樹調査で樹種や本数がまとめられているが、ベスト3:イチョウ、サクラ、ケヤキといった状態は、メルボルンの目標(一種5%以下)を見るに、少々バリエーションの少なさが気になります。解決策として考えられることがあればお聞かせください。

A (飯塚氏)街路樹の樹種は、道路内での植栽環境に適合したものが選択されてきた結果、現況のようになっていると考える。この偏りを小さくするためには、多様な樹種が生育できるように植栽地の幅員を広げるなど、植栽地の環境を変えていく必要がある。

Q17東京〕 公園のスライドを見るに、メルボルン市において電線の地中化が進んでいるように見られた。日本の都市部においても景観の改善や、災害対策などの面から、同様の工事が行われているが、多数の電気ケーブルは歩道下のごく浅い地中に埋設され街路樹の根系の生育の妨げとなっている。メルボルン市において、日本に見られるような問題は生じているのか?また、生じているのであれば、どのような設計、施工をされているのか?

A (シアーズ氏)メルボルンでも無電柱化工事の際に樹木の根系が切断されるなどの被害はありました。現在は、まず最初に根系の領域と地中埋設物の領域を分ける方法を検討します。しかし、多くの場合、領域を分ける事は困難です。そのため、被害を最小限にとどめるべく、樹木の近くを掘り起こす場合にはアーボリストが立会うことが決められています。アーボリストの指導により、根系の切断を最小限にとどめ、切断する場合は適切な処置を行うことになっています。具体的には幹直径の12倍の距離(枝ぶりの良い樹木の樹冠投影面積に匹敵)以内を掘り起こす場合にアーボリストの立会いが必要となります。(※東京のトークセッションで、地表面から溝を掘削せずに、電線を直接地中1m深さに埋設していく工法があり、最近はその工法が採用されているとの話もありました。)

Q18東京〕 街路樹の保全について、根系の生育領域が制限されるため、根上がりやルーピングが多くみられる。(日本は狭いと思う)舗装や歩道部分の破損や盛り上がりにより樹木自体が伐採されるなどの状態が多くある。根上がり対策としてベスト、ベターな取り組みを教えていただければと思います。

A (シアーズ氏)樹木が大きくなると根上がりによる舗装隆起はアメリカでもオーストラリアでも発生しています。土壌が固いほど根が地表面に集中し、舗装面隆起が起こりやすくなります。樹木の保護のために最も適切な方法は、舗装をはがし道路をのける事です。でも、それは普通無理な話でしょう。とすれば、隆起原因になっている根を切断し(根を曲げて地中深くに誘導できればより良いのだが)、土壌を深くまで軟らかくする事です。そうすれば新たな根は深くに入り込み表面隆起が防げます。そのための技術として、ストラクチャルソイル工法や、シルバセル工法などがあります。

Q19〔福岡〕 日本の街路樹等が害路樹といわれる最大の原因がムクドリなどの鳥のふん害です。鳥害についてオーストラリアやアメリカの状況はどうですか? 具体的な対策は? よろしくご教示ください。

A (シアーズ氏)鳥のフン害は起こります。被害は集中的な場所に起こりますので、木をゆすったり、たたいたりして追い払いますが、他の場所に移動するだけで根本的になくならないので頭が痛いところです。しかし、生物の多様性も重要である事を理解してもらう取り組みにより、問題が大きくなることを防げます。それらの重要性をわかってもらうためにメルボルンの生物に関するガイドブックを発行しています。

Q20東京〕 都市部ではある程度維持管理費用もつき、地域住民の愛着や協力があると思うが、地方部では、維持管理費が全樹木本数分にはつかず、地域住民からも管理できないなら切れ、もう年で協力できないと言われます。道路管理者も、苦情は来るし、切ってしまえという考えで、業者にも予算が無くこれ以上は勘弁してほしいと言われます。自分自身は2年で異動で、できることは限られており圧倒的に予算が無い中、工夫にも限界があります。地域住民の協力を仰ぐにも、まずは愛着を持ってもらえる管理が必要です。土木の人に緑地管理の必要性を理解してもらうにはどうしたらよいでしょうか?

A (シアーズ氏)熱意と努力は必要です。そして関心を持ってもらい、予算をつけるための戦略が必要です。あなたが2年で異動になるのは悲劇です。とても頭の痛い問題ですね。実際のところ、世界中の多くにそのような現状があると思います。地道に努力を続け訴え続ける事です。コミュニティが理解すれば状況は動き出すと思います。頑張ってください。

3.樹木管理業者技術に関するQ&A

Q21〔東京〕 イアンさんの考えている課題や計画を、現地の施工業者はきちんと理解していると思いますか? また、業者の理解度を深めるための工夫はどんなことをしていますか?

A (シアーズ氏)仕様書をきっちりと作り上げているから大丈夫です。樹木管理の仕様書は200ページにも及びます。そして、委託する会社は選ばなくてはなりません。技術力、過去の実績、信用度、企業の健全性などから選ぶ必要があります。業者を選んだ上で定期的な研修を行います。研修は各地域において定期的、そして不定期にも実施しています。何らかのイベントが開催される時は教育の機会でもあります。

Q22〔東京〕 造園業で現場職人を4年ほどやっている者です。アメリカなどトーマス氏の国では現場の職人に対して、教育の支援かトレーニングはどのように体系化されていますか。特に日本だと職人の稼ぎが仕事を抜け出しにくいことから、職人が教育を受けるのが難しいです。お金の支援はありますか。

A (スマイリー博士)目的に応じた様々な資格制度が運用されています。木登りに関しての資格、電線に関係する樹木管理の資格、上級アーボリストに関する資格などがISAで認定されています。

Q23〔東京〕 日本の造園業者に枝抜き、切り返しを指示しても手間を嫌がって、または技術が無いために指示通り剪定してもらえないのですが、どうすればよいと思いますか?

A (スマイリー博士)米国では、ISAのメンバーである企業と契約できます。 彼らはより多くの教育を受ける傾向があります。 ISAはまた、現在の技術で訓練されていることを証明するために、剪定資格の導入を検討しています。

4.気候変動(温暖化等)に関するQ&A

Q24〔東京〕 気候変動に対する対応策について具体的な方法などがあれば教えていただきたい。

A (スマイリー博士、Q14と同回答)気候変動に対応して極端な高温低温と湿度レベルに耐える木を植える必要があります。 気候変動により気象が激化し、多くの樹木が耐えられないほど極端な気候になります。 我々が気候変動に打ち勝つためには、もっと多くの木を植えて維持する必要があります。

Q25〔東京〕 樹種や植栽基盤の面積と倒伏被害の関係についてお話があったが、気候変動に伴う、外来生物の生息域の拡大についてのリスク評価、気候変動自体による樹勢と誘因となる現象の関係についてまとめる方法についても気になった。

A (飯塚氏)気候変動が樹木に与える影響については今後の課題である。

Q26〔東京〕 将来の高い気温に対する樹種を選ばれているとのことですが、メルボルン市の統合された政策では気温を4℃下げるとあり、一見矛盾しているようにみえます。樹種選定は目標達成までの現実的な対応と考えてよろしいでしょうか?

A (シアーズ氏)はい。 4℃下げる目標を掲げ、それを戦略的に実践していくのがアーバン フォレスト ストラテジーです。基本は地域性を重視した樹種を選択しますが、戦略的には現在の高温や熱波に耐えられる樹種も必要となってくるのです。ゴムノキがメルボルンで植えられるようなったのは、そのような意図を持っての事です。

Q27〔東京〕 気温の上昇に伴う樹種の選択はどのように選んでいるのか。在来種でなく外来種も積極的に取り入れていくのか。

A (シアーズ氏)基本は在来種を優先するようにしています。次にすでに定着している外来種も使います。ただ、コンクリートとアスファルトに囲まれた過酷な環境が改変できない場所、地下水位が高いなどで生育が困難な場所などには、ゴムノキなどの外来種を導入する場合もあります。積極的に外来種を優先している訳ではありません。

5.コミュニティ(環境教育、樹木管理、政策理解等)に関するQ&A

Q28〔福岡〕 地域のコミュニティからの理解がとてもあるとお聞きしましたが、なぜコミュニティの植樹に対する意識が変わったのでしょうか? 生物多様性についての教育が学校などで行われているのでしょうか?

A (シアーズ氏)それは樹木の能力と重要性を理解してもらったからに他なりません。説得には定量化して説明することが重要です。例えば、こうすれば温度が4度下がると明確に打ち出す事で理解が得やすくなります。また、長期的な対策として子供の頃からの教育が重要となります。

Q29〔福岡〕 日本では自然環境を地域資源、共有財とみなす考え方があまり定着していないように思われるが、その考え方を定着させるためには、どのような取り組み、例えば環境学習や行政における意識改革をどのように行っていけばよいか。都市の中で緑を増やすには、それを管理し、恩恵を受ける市民がそのような考え方を持つことが一番重要だと考える。

A (シアーズ氏)まずデータを集め、科学的に定量的にエビデンスを示さねばなりません。次に市民にわかりやすく説明する必要があります。ホームページ、パンフレット、講習会、イベント、あらゆる機会を通じて市民との接点を持つようにし説明します。同様に行政組織や企業にも訴えかけていく必要があります。長期的には子供の頃からの学習の機会が重要です。メルボルンでも子供への環境学習には力を入れています。そして、成果を見えるようにしなくてはなりません。定量的に公表すべきです。そして推進が遅れているところも一目瞭然にわかるように。

Q30〔東京〕 講義でよく街路樹に反対の意見がよくあるとお聞きし、理由としては、落葉処理が大変、通行(車、歩行)がよく挙げられるのですが、どうしたらそう(メルボルンのように)意識を変えていけると思いますか。

A (シアーズ氏)一部の人が苦情を申し立てるが、大半の人はそうでない事を説得する必要があります。また、説明に当たってはエビデンスも重要です。そのためにあらゆるデータの蓄積が必要だったわけです。データ収集には3年の歳月をかけました。メルボルンでは、コミュニティと共同でアーバンフォレストの実施計画を策定してきました。コミュニティとある分野において合意形成できれば、一人や二人が反対しても問題は解決できます。コミュニティとの合意形成を築き上げるのに5年以上もの歳月を要しました。

Q31〔東京〕 街路樹の伐採に関する合意形成について、住民の愛着が強い樹木でも高齢のため、伐採したほうが良い時が多くある。どうしても、その木にこだわられた場合の解決策として、どんな方法をとられているか、実例を教えてほしい。

A (シアーズ氏)笑顔で話せばなんとかなるんじゃないかな(笑)。その樹木が抱えるリスクと維持するコストと更新していくメリットについて根気強く説得します。これもコミュニティとの合意形成が図られていると比較的スムーズに交渉が可能です。もし、どうしてもと言うならば、その人に安全な場所に移植してもらうようにすすめるでしょうね。

Q32東京〕 落葉等の苦情にはどのように対応しているのか?

A (シアーズ氏)コミュニティとの合意形成が重要です。そして説得にはデータに基づいて丁寧に説明する必要があります。ある家の奥様が落ち葉が迷惑だから木を切ってと申し出ました。でも、この樹木があるおかげであなたの家の空調費はこれだけ低くなっている事や、そのおかげで街の不動産価値が減っていない事を説明しました。そしたら奥さんは、「じゃあ、もう一本植えて」と言ってきました。

Q33東京〕 都市緑化を推進するうえで、日照障害、落葉等直接に接して居住する住民への影響は避けられない。どのような対応策を検討すべきか。

A (シアーズ氏)コミュニティとの合意と説得するデータが必要です。

Q34東京〕 樹冠が大きい木が理想であるというが、落葉や越境に対する強い苦情はないのか。あるならば、どのように問題をクリアしているのか。日本では地元住民の理解と協力がないと難しい現状がある。

A (シアーズ氏)市民、地域住民への情報発信が重要です。

Q35〔東京 樹冠を広げることは技術的に難しくないと思いますが、これにより増える落葉を沿道の方の清掃に任せるのはとても理解が得られないと思います。落葉の対策が落葉対策の過剰な剪定の防止、樹木の健全度の向上、美しい並木や紅葉景観の創出に不可欠だと個人的には考えています。落葉の清掃は日本では沿道の人が担うものといった古くからの考え方があり行政による清掃はほとんど行われていないと思いますが、メルボルンや北米ではどこが主体となって道路の落葉清掃をしているのでしょうか。

A (シアーズ氏)清掃車を走らせる等はメルボルン市が担いますが、普段の掃除は地域住民とボランティアです。協力体制が必要です。それらの協力を得るために市民向けの講習会を毎年10箇所で開催しています。一箇所当たり150人から400人(平均300人程度)の人が集まるようになっている。この講習会は現在で5年継続しています。また、講習会に集まってもらえるように、最近では有名なアーティストや芸能人もが参加してくれます。地域の企業がスポンサーになり、アーバンフォレスト戦略を推奨して行ってくれるようになりました。

Q36東京〕 地元の樹木の愛好家団体より、公園内の樹木剪定について厳しめのご意見をいただきます。意見のみならず、剪定方法にまで関与してくるようになりました。以前、雑な強剪定をした際、その団体が抗議してきて謝罪させられたこともあるそうです。そういった過去のいきさつもあるとしても、一素人団体の意向に振り回されている現状はいかがなものかとも思っています。このような団体とは、どうコミュニケーションをとっていけばよいかお知恵を拝借できれば幸いです。

A (飯塚氏)樹木の剪定について、(なかなか難しいが)問題の無いように最善の対策を講じておくことが重要である。剪定方法等の維持管理内容については、専門家や地元住民を含めた検討委員会などで方針をとりまとめ、パブリックコメントを行った上で公表し、この方針に沿って実施していくことも対策のひとつと考える。

Q37東京〕 落葉や害虫等、都市樹木への苦情は多くあるのか?

A (スマイリー博士)米国でも多くの人が落ち葉や虫が嫌いなため問題が発生しています。そのため必要の無い伐採や移植が行われています。バートレットでは病害や虫害の同定を行っています。これは我々の基盤業務です。

Q38〔東京〕 総論賛成各論反対の意見はありませんか。例えば、環境向上のための緑化は賛成だが落葉や害虫などが嫌なので身近な木は切ってほしいなど。

A (シアーズ氏)現在、メルボルンではそのような声は減っています。しかし、理解を得られるようになるのに5年はかかりました。

Q39〔東京〕 個人的に野草を用いた景観の向上について興味を持ったが、それを普及するうえで(周知)どのようなツールを用いたか気になった。

A (シアーズ氏)周知にはガイドブックで見せることです。イベントではパネルの展示を行います。市民向けの勉強会も実施しています。

Q40〔東京〕 緑の基本計画と都市樹木の再生の整合性について。地方自治体が作成することのできる緑の基本計画の中で都市樹木の再生について、基本方針、施策について検討する上で、先生がおっしゃるステークホルダー(住民)によりよく知っていただく(実感してもらう)ためにどう伝えていけばよいか、ご教示ください。

A (飯塚氏)まずは、樹木管理者が樹木についての知識を十分に理解し、保全業務を実施することが重要である。その上で、樹木の保全活動をPRするとともに、樹木の緑化機能(地球温暖化やヒートアイランドの抑制等)を理解してもらうことが重要である。同時に、樹木を花見やイルミネーション等で活用することでの効果もアピールするとともに、次世代に継承する使命があることを理解してもらう。

Q41東京〕 NPOなどステークホルダーとの連携について教えてください。

A (シアーズ氏)年間を通じてイベントの開催、ホームページを通じての情報発信と収集、清掃や維持管理においての協力など多くの場面に参画してもらっています。情報を公開していくことで、協力者が増えます。

6.樹木(生理、剪定等)に関するQ&A

Q42〔東京〕 応答成長とは樹木のどのような状態を指しているのでしょうか。

  〔東京、同回答だった質問〕  樹木の損壊について、樹木の要因の一つに応答成長とありましたが、応答とはどのような意味でしょうか? また、アメリカでの危険度を測る技術的な課題は何でしょうか?

A (スマイリー博士)樹木の応答成長は、過剰な動き、重量、または木の損傷により発生します(あて材とよばれる部位の成長です)。 欠損部位等の強度の弱い部位の強度改善のため、樹木自身が補強を行うものです。 常に成功するとは限りません。

Q43〔東京〕 都心部などの夜間のライト、ネオン、排気ガス等の影響による、特に落葉樹に及ぼす生理的なもの(冬に落葉しない、常に新芽を出すなど)についての対策。(を教えてほしい)

A (シアーズ氏)ネオンなどが及ぼす生理的影響と対策法について私は知りません。ゴメンなさい。ただ、樹木が衰退する原因が明確であるならば、その根本原因を排除可能かを検討する必要はあるでしょうね。

Q44東京〕 剪定の方法についてですが、幅員が狭く、民地とのクリアランスの確保が難しい場合に、剪定はどのようにするのが良いと思いますか?

A (スマイリー博士)ここでは削減剪定が必要なようです。 その後、ツリー成長レギュレータを適用して、ブランチの再成長を遅らせることができます。 詳細については、ISAベストマネジメントプラクティスの剪定についてを参照してください。

Q45〔東京〕 造形的剪定とは具体的にどのようなものですか?

A (シアーズ氏)ストラクチャルプルーニングの事ですね。若木のうちに主幹と骨格なる大枝を定め剪定する手法です。若木での対処により、良い将来樹形ができます。同時にトータル剪定手間(コスト)が削減できます。

Q46〔東京〕 構造的剪定はだれが決定し、実施しているのか? 日本では民間業者がザクザクと切って、幹しか残していないような木もあるほど適当に剪定されていることもあるが、高度な技術や理念に沿った剪定が行える理由が知りたい。

  〔東京、同回答だった質問〕  北米ではどの程度structural pruningが実施されていますか?

A (スマイリー博士)技術水準が高い会社や多くの街で構造剪定が行われています。

Q47〔東京〕 構造的剪定の際、どういった基準で枝を残していったらいいのですか。それは、日本の剪定と似ているのですか。

A (スマイリー博士)剪定時に残す最も重要な幹は、支配的なリーダーです。 その他は、目的に応じて削除または削減する必要があります。 ツリープルーニングのISAベストマネジメントプラクティスhttps://wwv.isa-arbor.com/store/product/58/をご覧ください。

Q48東京〕 剪定作業を行う民間業者が変更になった場合、剪定手法についてはどのように引き継がれるか。市職員による立会等は行われるか?

A (シアーズ氏)メルボルン市では、毎年民間業者に対して講習会を開催しています。講習を受け、その技術を習得した者しか剪定をはじめとする樹木管理の仕事には就けません。また、受託業者への指導ならびにチェック機能を担保するために、市が選任しているアーボリストが立ち会うなどの対策を講じています。そのような体制を整えれば、成果の差は少なくなります。

Q49〔東京〕 台風対策を考えると、樹冠を大きくしたまま透かす(例えば、LAI:2程度)といった方法が考えられるがご意見をお聞かせください。(LAI:Leaf Area Index)

A (シアーズ氏)骨格となる枝を残し、それ以外の枝で樹形を整える上で不要と思われる枝を除去する方法は、風圧力を逃がす手法として効果的です。樹冠被覆率を高めるには強い風圧を受けにくい下枝を伸ばすようにすると良いでしょう。剪定は効果的な風対策と言えます。しかし、大木になってからの剪定作業は大変ですから、植栽後7年間のうちに骨格剪定による仕立てが推奨されます。

Q50東京〕 街路樹の剪定方法はどのようにしていますか? 日本では樹冠全体を縮小させることが一般的です。フロリダではGilman先生が、structural pruningを推奨しています。樹高を縮小せずに保持する剪定方法をどのように思われますか?

A (スマイリー博士)剪定は、目的または目標に基づいています。 私たちは何を達成しようとしていますか? ギルマン博士が提示した構造的剪定は、破損を減らすために樹体構造を改善することでした。 根返りを減らす1つの方法は、葉の量を減らすことによって風の抵抗を減らすことです。あなたの目的はギルマン博士とは違うようです。

Q51〔東京〕 下枝上げが遅いことと、支柱のしすぎは日本の植樹の問題ととらえています。皆さんプロは木の寿命に対し、これらをどう思われますか。(強い木を育てるといる意味で)

A (スマイリー博士)大きくて低い枝を削除する必要がないように、若木の時代から数年ごとに木を剪定するのが最善です。 これは構造的剪定の手法の一部です。

Q52〔福岡〕 植樹する苗についての質問です。日本では外国から入ってきた植物や、同じ日本でも九州の植物と北部の日本から入ってきた植物が交雑して問題になっています。メルボルンでの植樹で、様々な種類の木を植樹しているとお話しされていましたが、もともとメルボルンに生育していない木の植樹も行ったのでしょうか。遺伝汚染などの問題は出てきているのか教えていただけると嬉しいです。

A (シアーズ氏)メルボルン市における植栽も基本的には在来種を用います。これまでメルボルン市では特定の限られた樹種ばかりが植えられてきました。しかも外来種が多く採用されてきました。外来種も長年そこに存在すれば、すでに違和感無く溶け込んでいます。ただ、単一樹種の場合、気象害、病虫害などの発生により被害が甚大化する恐れがあります。そのようなことから多様性を求める事になり、そして在来種も重要視するようになりました。樹種の選択にあたっては遺伝的な汚染がおき難いであろう樹種を選択していますが、完璧ではないかもしれません。

Q53東京〕 7年間の集中的管理ということであるが、すべての樹種で7年間であるか?

A (シアーズ氏)すべてが一律に7年という訳ではありません。同一樹種でも育つ環境によって生育量は異なります。樹種が異なればその差はより大きくなります。ポイントは幼木から若木のうちに集中管理することです。大木になってから対策を講じるより、若いうちに実施した方が効率的で手間とコストが削減できる事になります。7年というのはその目安です。

7.樹木データベース(樹木台帳、街路樹マップ等)に関するQ&A

Q54〔東京〕 7万本ある個々の公共樹木のデータベースについて、どの程度の頻度で更新されているのか。また、それはどのようになされているか。

A (シアーズ氏)メルボルンでは2年に一度の更新です。入札により調査会社は決まります。現在はデータベースがそろっていますので手間はずいぶんと減りました。

Q55〔東京〕 公園樹木台帳は職員が随時更新しているのか?

  〔東京、同回答だった質問〕  樹木台帳の更新はどのようにしているのか。

A (スマイリー博士)樹木台帳の運用実施と維持には費用がかかります。 多くの台帳では、剪定が実施されるたびに情報を更新できるようになりました。 これを日常的な慣行にすることで、台帳更新を剪定のコストに含めています。別の、より安価な代替手段は、空中写真または衛星写真を使用して樹冠カバーを監視することです。 これは、都市樹木管理プログラムの有効性を判断するための安価な方法です。

Q56〔東京〕 樹木はデータベース化されているということですが、大量の樹木の情報をどうやって入力しているのでしょうか? すべて人間が手で入力しているのでしょうか? 効率の良い入力、管理方法の工夫があればぜひ教えてください。

A (シアーズ氏)樹冠率やその地の環境性能を評価する際に、まずは航空測定結果から算出します。航空写真データは1945年からあります。現在は飛行機を年4回飛ばしています。i-Treeの調査は造園業やコンサルタントに発注しデータベース化します。赤外線写真測定なども実施していきます。i-Tree調査結果と航空測量調査結果を照らし合わせ、航空測量データはより精度の高いデータに修正されていきます。なお、予算についてはメルボルン市だけでなくメルボルン地域32の自治体に費用負担してもらっています。

Q57〔東京〕 樹木を1本1本データベースで管理されているとのことですが、樹木にチップなど埋め込んでいるのでしょうか。

A (シアーズ氏)ICタグのようなチップの埋め込みは良いアイデアだと思います。しかしメルボルンでチップは埋め込まれていません。

Q58〔東京〕 樹木台帳を整備し植栽位置までもホームページで公開しているのは素晴らしいと思います。しかしながら、その更新作業にはコストも相当かかると思います。コストパフォーマンスを考えると、不経済ではないか。街路樹の経済効果を訴えるには台帳が無くても可能だし、台帳作成更新が仕事のための仕事になっていないかと思いました。

A (シアーズ氏)とても重宝しています。これがなければ建設工事により伐採された樹木の保証金額の算出に手間取ります。市民に対する樹木の重要性と現在の状況を公表する際の基本データの取得にも困ります。樹木の寿命を推察することもできません。政策実施後の評価にも困ります。市民にとっても樹木管理者にとっても、とても重要なデータベースです。定量化できなければ理解は深まりません。ですから、不経済だとは全く思っていません。また、データベース化されると後々の更新費は安くつきます。

Q59〔東京〕 海外の街路樹整備では、住民にもわかりやすい指標で共有、公開している点が良いと思いました。グリーンインフラは高い品質であるからこそ効果を発揮するものであると考えますので、住民や民間をうまく巻き込んだ手段が必要になると思います。そのために、わかりやすく明確な目標設定とその根拠と効果を公開していくとよいと思いました。現状そのようなツールまたはアイデアはありますか? 教えていただけると幸いです。

A (飯塚氏)残念ながら日本には、整備されたものないため、アメリカのi-Tree ecoのようなシステムを活用しつつ、日本でのシステムを構築することが必要である。そのためには、樹木に関する基礎データや機能評価方法について調査・研究することが課題である。

Q60〔東京〕 管理する樹木の ITやGISによるデータベースの更新は、どのようなシステム(費用、回数等を含め)で実施しているのか? 日本ではシステムが十分機能せず、いまだ紙ベースのデータ管理を行っているケースが多い。

A (シアーズ氏)各国で採用されているi-Treeをメルボルンでも使っている。そして樹木データの更新は、貴重木は毎年、それ以外は2年に一度実施している。

Q61東京〕 市民と樹木、管理者とつながる仕組みとしてとも良いと感じました。マップのデータ作成、更新(剪定等の管理情報、形状、伐採、植え替えなど)は、どのような仕組みで行っているのでしょうか?(行政の直営、樹木管理業者受託、外部コンサルタント委託、市民ボランティアなど)

A (シアーズ氏)データの作成・更新は造園会社やコンサルタントが入札します。アーボリストはそれを監督します。それがセットで発注されます。データの更新は、重要な場所は毎年、それ以外は2年に一度が基本です。キャノピーカバー率の測定は年に4回航空測量を実施しています。

Q62東京〕 日本には(ご紹介いただいたような)街路樹マップがウェブサイトで見ることができず、海外のように作ってほしいと思っているが、製作するのに誰が主導で作り、また管理は誰が行っているのか。

A (シアーズ氏)もちろんメルボルン市が主導でマップは作成しています。管理もメルボルン市です。樹木へのメールに対する返信もメルボルン市の担当者が行っています。データベースを活用することにより、予算は過去より安くなってきています。

Q63東京〕 木にメールをすると、木から返信があると伺いましたが本当はどの方が返信されているのですか?

A (シアーズ氏)メルボルン市の職員が担当しています。結構楽しんで取り組んでくれています。すべてに対して返信している訳ではなく、担当者が興味を引いたものや、重要な意見だと思えるものに対して返信を書き込むようにしています。

Q64東京〕 木との対話を担当するtreeの中の人は市役所の職員でしょうか。

A (シアーズ氏)そうです。メルボルン市の職員が対応しています。

8.樹木リスクマネジメントに関するQ&A

Q65〔東京〕 昨年10月の台風では、根返りで倒れた樹木が多く見られました。根株や幹について、腐朽がなく健全なものでも倒れるものがありました。このような樹木ないしは倒木に対して、どのような診断が倒木対策として有効でしょうか?

A (スマイリー博士)台風による被害を予想するのは困難です。これらの風の条件では、被害部があるため折損等の事象が「起こりうる」または「起こりそうである」あると判定された樹木の多くで予想された折損が発生します。 これらの木は、次の嵐の前に予防的措置をとることができます。台風の場合、「起こりそうにない」失敗の可能性があるいくつかの樹木の被害も発生します。 これらは、被害を予測するのは困難です。 これらの用語と診断の詳細については、ツリーのリスク評価に関するISAベストマネジメントプラクティスを参照してください。

Q66東京〕 資料9ページ中段右「人や物が傷つく可能性」の中に樹木の構造(特に傾き)とありましたが、傾きの判定は何らかの数値の(例〇度以上は大など)基準がありますか。もしくは、危険判定をされる方の私見ですか。

A (スマイリー博士)はい、https://www.bartlett.com/resources/Determining-Change-of-Lean.pdf の出版物をご覧ください

Q67〔東京〕 道路樹冠被覆率を高めるためにロンドンプレーンが優れていると紹介があったが、落枝による事故のリスクはどの程度か。

A (シアーズ氏)プラタナスに限った落枝事故の件数は知りません。調べればわかると思います。これまでメルボルンはプラタナスばかりだったので落枝事故が発生したならばプラタナスだった可能性は高いと考えられます。ただ、プラタナスに落枝事故が多いとは認識していません。樹種要因よりも他の理由があっての落枝だと思います。

Q68東京〕 リスクマトリックスで高リスクや中リスクと判断された樹木には、どのような措置がなされるのか? 1本ずつすべて個別の対策を検討するのか。一定以上の危険度物は伐採するなど、マニュアル的、画一的な管理基準を設けているのか。また、その措置を決定するのはだれか? 地域の行政府なのか管理する会社なのか?

  〔東京、同回答だった質問〕 リスク分類後のそれぞれに対する処置、対応方法を教えてください。

A (スマイリー博士)リスクの軽減方法は、個々の樹木が持つリスク内容により違います。 リスクの軽減には、「ターゲット(被害を受ける対象物)」の移動、樹木周囲歩道設定検討、剪定、ケーブルによる保護、または樹木自体の伐採が含まれます。詳細については、ISAベストマネジメントプラクティスを参照してください。

Q69東京〕 樹木の危険評価について、リスク判定の樹木の診断の詳細をもう少し詳しく知りたい。(外観判定のみ)

A (スマイリー博士)ツリーリスクの評価に興味があるようですね。 詳細については、ツリーリスク評価のISAベストマネジメントプラクティスを参照してください。 https://wwv.isa-arbor.com/store/product/324

Q70〔東京〕 樹種別で評価は変わるのでしょうか、樹齢の違いで評価は変わるのでしょうか?

A (スマイリー博士)はい、これらは考慮すべき2つの要素です。 詳細については、ツリーリスク評価のISAベストマネジメントプラクティスを参照してください。 https://wwv.isa-arbor.com/store/product/324

Q71〔東京〕 リスクが高いと、判定後はだれがどのように対応するのか。

A (スマイリー博士)米国では樹木の所有者が樹木によるリスクを最小化する責務を持っています。

Q72〔東京〕 樹木の危険評価において、中リスクの場合、対処方法としては、どのようなものがあるのか教えてください。

A (スマイリー博士)ツリーリスク評価のためのISAベストマネジメントプラクティスには、応答成長の説明があります。https://wwv.isa-arbor.com/store/product/324

Q73〔福岡〕 どれくらいの風力で樹木が転倒するかは、管理の目安として必要ですが、問題となるのは風荷重における抗力係数です。風洞実験や変位計などが使用され様々なデータがとられています。しかし、どれも大木ではありません。抗力係数が仮に0.35とすると風速30m/sでは倒木する樹木も18m/sでは倒れません。私は感覚的な量として、管理する際、枝葉の密な樹木は、1~0.75くらいとして、注意すべき樹木と見ます。枝葉が疎な樹木や枝が柔らかい(しなる)樹木は注意すべき樹木と見ません。スマイリー博士の意見を聞かせてください。

A (スマイリー博士)これに関しては良いデータを持っておりません。

Q74〔東京〕 スライドでは樹種による被害の種類の統計や幹周による被害の統計が示されていましたが、これらはホームページなどに載っているのでしょうか? 管理や設計をするサイドとしてはとても重要なデータだと思いました。

A (シアーズ氏)未公表であり、今後行う予定。

Q75〔東京〕 樹木の根の状態を非破壊的に調べる取り組みを行っており、地元の街路樹(ケヤキ)で測定を実施しているが、樹木マネジメント(管理)を行うためには、樹木個体を定期的に、継続的に見ることが大事と感じている。しかし政策として実施するとなるとその時々の行政の考え方に影響を受けることになりはしないのか。(持続的な取り組みであるが故、必要なことがなされなくなるなどが心配である。)

A (飯塚氏)樹木は生き物であり、病虫害の影響を強く受けることから、生育不良等の問題が突然発生する恐れがある。街路樹は、道路附属物として位置づけられており、道路交通の支障とならないよう、適切な維持管理が求められている。そのため、このような観点からの道路管理者による点検は定期的に行われているが、樹木生育の詳細な部分までを定期的に把握することは困難であるのが現状である。

Q76〔東京〕 街路樹について、調査診断において危険度が高い樹木と判断されたものについて伐採措置とせず支柱設置等により保全が図られた事例はあるか。

A (シアーズ氏)危険を及ぼす可能性の高い樹木は更新していきます。市民には更新するための説得も行っています。しかし、まれにどうしても保護しなくてはならない樹木もあります。貴重生物の棲みかになっている場合や歴史的価値のある樹木等その理由は様々です。支柱、ブレーシング、立ち入り禁止処置、剪定など対策も状況に応じて実施する必要があります。危険木を残す際には、その樹木が将来回復可能か、すでに寿命なのかの見極めも重要です。

Q77〔東京〕 地方都市などで街路樹の診断などを業務化しようとするときに、業務としてのノウハウが少なく、手探りの状態でスタートするものの、業務として動き出すことが無くなることがよくあります。地方の樹木医で、街路樹診断協会に属していないものでも診断協会のフォローアップなどはお願いできませんでしょうか?また、各種資料などは配布していただけるのでしょうか?

A (街診協)フォローアップは可能です。希望される資料内容についてご連絡ください。

Q78〔東京〕 都市部とは異なりますが、山地の方に生育する林道沿いや鉄道沿線では本数が膨大であることや、アクセスが困難で都市樹木のリスクマネジメントが適用しにくいところがあります。リモートセンシングや対策優先箇所の抽出等が、効果的な対策があるかと思いますが、自然環境に近い条件でかつリスクマネジメントが要求される個所について、先端技術やご意見を伺えれば幸いです。

A (飯塚氏)自然環境に近い地域での、効率的なリスクマネジメント技術(IOT技術等の活用)は今後の課題としてある。ただし、このような地域については、植栽する樹木の必要性について再考する必要がある。植栽した樹木の維持管理は必要不可欠なものであることを認識して、必要性が薄い地域での植栽を行わないことも選択肢のひとつである。

9.植栽基盤(舗装材等)に関するQ&A

Q79〔東京〕 街路樹の植栽時は透水性を高めるためにどのような工夫をされていますか?

A (スマイリー博士)駐車場や使用率の低い道路では、水の浸透を改善するために使用できるさまざまな透水性舗装があります。 これらの舗装は、使用頻度の高い道路ではうまく機能しません。 したがって、一般的に、私たちにできることは、道路脇の植え枡に直接水が導入されるような方法を利用することです。また道路の下に根を張らせないようにしています。 植栽用の穴に直接水を入れると、十分な土の排水が必要になります。そうしないと、木が枯れてしまいます。

Q80〔東京〕 日本の街路樹の植栽桝や植栽基盤は海外と比べて違う点はどのような点か。

A (シアーズ氏)残念ながら東京の樹木植栽スペースは狭いことが問題ですね。

Q81〔東京〕 木の根元の貯水タンクとはどのような構造か、根腐れのリスクは?

A (シアーズ氏)植栽地への雨水浸透のことでしょうか? それとも私が気に入っている木を紹介したトイレがあった木の根元の事でしょうか? 自然界の樹木の根元は貯水タンクのようなものです。山が多くの水を保持するように。都市樹木にもその森林の構造をつくってあげれば良いのです。そうすれば水は地中にしみこみ、樹木は良く育つようになります。自然の土は軟らかいものです。軟らかいとは土壌に隙間が多く存在している状態です。土壌の隙間を多くし軟らかく保たれれば都市部でも植栽地に保水できます。間隙の多い土壌に保たれた水は腐らず根腐れは起こりません。間隙が多い、軟らかい土壌構造を保つために、プラスチックボックスを埋設する方法や、骨材を用いたストラクチャルソイルという工法が一般的に用いられています。

Q82東京〕 洪水対策に樹木を植栽した雨水貯蔵設備について紹介があったが、通水、透水基盤の素材について気になった。道路のゴミ等で水が通らなくなったりしないのか?

A (シアーズ氏)舗装材は透水性舗装を用います。それらは目詰まりし浸透しなくなる場合があるかもしれません。でも、全面的に浸透しなくなるケースは少ないのでは。現時点においてそれが問題とはなっていません。また、雨水浸透の方法は舗装材からだけではありません。側溝のように自然に流れ込む場所、道路の排水口から植栽地に導かれる方法などの方が効率的に集水しています。

10.都市樹木(樹冠率、樹種等)に関するQ&A

Q83〔東京〕 CO2固定効果は長期で見るとあるといえるでしょうか? 葉、幹も数十年経つと焼却されたり、腐ったりします。そうするとCO2が大気中に放出されます。

A (飯塚氏)CO2固定効果は長期的に見てもあると考える。伐採された樹木等は木材利用はもとより、燃料として利用(カーボンニュートラル)することで化石燃料の代替ともなり、この分のCO2排出が抑制される。ただし、葉についての効果は考えていない。

Q84〔東京〕 樹冠占有率の大きい大径木が危険樹木判断や枯死等で伐採された場合、その補充はどのように行われるか。1本の植栽では時間を要する。

A (シアーズ氏)通常は1本なくなれば1本植栽し、大きく育つまで待つ事になります。どうしても必要な場合は本数を増やし、将来間引くこともあります。

Q85〔東京〕 樹冠被覆率の目標を40%としている理由、根拠について教えてください。

A (シアーズ氏)気温を4℃下げる目標を達成するために、科学的に導き出された被覆率です。いくつかの研究がなされています。

Q86〔東京〕 日本では樹種転換により樹冠が大きくならない木を植える例が多いのですが、どう思うかご意見を。

A (シアーズ氏)メルボルンの政策とは真逆ですね。それでは樹冠率が高まらずメルボルンの目標が達成できません。

Q87〔東京〕 樹木被覆率の現況調査の方法を具体的に教えてください。

A (シアーズ氏)基本は飛行機を飛ばして調査します。年4回飛ばします。周辺自治体からも費用を提供してもらっています。

Q88〔東京〕 樹木被覆率40%を達成するために行政ができること。

A (シアーズ氏講演より)緑を増やすことによる恩恵について、論拠(エビデンス)を示し、さまざまな戦略、指針をコミュニティの理解を得て策定して議会の承認を得る(これにより資金が得られる)。モデリングするなど実行して、目標を達成する。

Q89〔東京〕 緑量については、樹木の本数ではなく樹冠の被覆率で評価されるのか。

A (シアーズ氏)そうです。樹木本数ではなくキャノピーカバー率です。本数を植えるより樹冠が大きくなるほうが、あらゆる価値が高い事がわかっています。

Q90〔東京〕 世界から優秀な樹木を探しているとのことでしたが、メルボルンでは地域性種苗という考えはあるのでしょうか?

A (シアーズ氏)樹種選択は地域性樹種を優先するようにしています。

11.都市緑化(効用、民有地緑化等)に関するQ&A

Q91〔東京〕 建物を使った緑地が重要とのことでしたが、民間企業との協働体制や民間企業への補助金などの施策について推進するにあたって、どのようにされているのかを教えてください。

A (シアーズ氏)州と市の両方で補助金制度があります。補助金は80万豪ドル~330万豪ドル程度の予算をつけている。この資金は樹木の補償費(建設等で木が切られた場合の賠償金など)を当てたりします。木の価値を公表していますから賠償額を算出するのは簡単です。

Q92東京〕 民間企業にも緑化に関わってもらっているとの話があったが、メルボルン市はどのように民間企業に対して、税制上の優遇や、助成などをしているのか?

A (シアーズ氏)開発などによる木の伐採に対する規制や罰則、州と市の補助金制度、などがあります。この資金は樹木の補償費(建設等で木が切られた場合の賠償金など)を当てたりします。木の価値を公表していますから賠償額を算出するのは簡単です。民間からの賛同を得る上で最も重要な事はあらゆる情報を公開し、樹木に対する重要性を理解してもらう取り組みです。

Q93〔東京〕 医師が治療として公園に連れていくとはどういう疾患を持った患者さんを連れて行くのか? その目的と効果は? オーストラリアまたはメルボルン市では療法または治療行為として(保険適用を)認められているのか?

A (シアーズ氏)緑あふれる環境は人の心を安らげます。緑が直接的にがん細胞を退治できるわけではありません。疾患の種類に関わらず、患者の多くは表に出て緑に接したいと思うようです。公園は体を動かすリハビリに役立ちますが、精神面でもメリットはあります。患者にとって心の安らぎはとても重要です。ただ、公園に連れて行く行為そのものに保険の適用があるわけではありません。

12.その他Q&A

Q94〔東京〕 How many species of trees planted in Melbourne?

A (シアーズ氏)約350種となります。

Q95〔東京〕 Are there symbolic old trees in Melbourne? And, How many trees are there?

A (シアーズ氏)古木とされるものは120本、そして保護樹木に登録されているのが50本。合わせて170本がメルボルン市におけるシンボリックな木となります。これらは毎年、データが収集されデータ更新がなされています。

Q96東京〕 地球温暖化、都市のヒートアイランド現象、ゲリラ豪雨等々への対策としてグリーンインフラ整備、都市緑化、緑被率の増大について総論で反対とする人はあまりいないと思います。一方で各論となると、人、車、建物と樹木、緑が近すぎることによる軋轢→日照、落葉、害虫、眺望、根上がり、鳥糞etc.による木、植物への圧迫(クレーム)が多いのが実情です。例:路面を冷やすため樹冠の大きな街路樹を植える→隣地の住民や店から前述のクレームが→管理者は耐え切れずに剪定or伐採となってしまいます。管理費が見込めない、ボランティアも期待できない、人々の緑環境に対する意識(知識)の低さと手詰まり感で一杯です。国の施策として法による規制、予算の増大、子供、市民への環境教育、広報を期待しております。

A (飯塚氏)国や自体体での対策が第一であり、より望まれまるものの、予算や人員不足により十分な役割を果たせない状況にあることも問題としてある。海外のように、ボランティア参加による対応も含めた協働体制の構築も重要である。

Q97〔東京〕 多くの日本人がコアラやカンガルーのようなオーストラリア独自の動物を知っています。メルボルンにおいてそれらと共存している例はありますか?

A (シアーズ氏)メルボルン市内では生物多様性の観点から鳥類や昆虫の保護にも努めています。しかし、メルボルン市内でコアラやカンガルーとの共生は残念ながらありません。都市部では無理があります。

Q98〔東京〕 私が思うに、日本の都市計画は古いものや停止しているものもありますが、日本でも時に勇気をもって都市計画を変える必要があるかもしれません、本当にありがとうございました。

A (シアーズ氏)何事も勇気をもって取り組んでください。たいていの場合、動き始めれば不安に思っていたことがそれほどではなかったとわかります。

Q99〔東京〕 アメリカの都市樹木管理の現場において従事する女性の割合はどのくらいでしょうか。

A (スマイリー博士)パーセンテージは不明だが少ない。

Q100〔東京〕 アメリカの都市樹木管理の現場において、従事する女性の割合はどのくらいでしょうか。私は都市公園工事の現場で働いていますが女性の割合はとても少ないです。日本の造園業界は全体的に女性が少ない傾向がありますがアメリカも同様でしょうか。どのような活躍の場があり、配慮がなされているのか知りたいです。

A (スマイリー博士)米国でも状況は同様です。 都市樹木管理の現場では女性はほとんどおらず、アーボリカルチャーの分野ではさらに少数です。 しかし、過去10年間で、これらの分野の女性の数は増え続けています。私たちの会社はあらゆるレベルの女性を歓迎し、女性を成功させようとしています。

Q101〔東京〕 都市部ではなく山間部なのですが、日本ではソーラーパネル設置のために山の木を切り、森林率が下がったり土砂崩れが起こったりという問題が起きています。メルボルン市やオーストラリアでは、環境問題のための政策が別の災害に繋がった事例はありますか?

A (シアーズ氏) 何かを実施する際には、メリットだけではなく何らかのデメリットがつきまといます。デメリットを最小化するための対策は講じなければなりません。森林率が下がってもそれを上回るメリットがあるならば、それは仕方のない事かもしれません。しかし、それにより土砂崩れが発生したとするならば人災と言えます。利便性を追求し都市化が進んだ結果、生物が生存の危機をむかえ、人も住みづらい環境に陥っています。メルボルンではその環境対策に重点を置いた政策を推進しています。木を大きくすれば落ち葉や鳥のフン害だけでなく、落雷のリスクだって高まります。しかし、より大きなメリットがあるとすれば推進すれば良いのです。そしてメリットとリスクを天秤にかける際に注意すべき事は時間軸です。短期のメリットだけなのか長期に渡るメリットなのか?

Q102東京〕 メルボルンにおけるグリーンインフラの定義は?

A (シアーズ氏)グリーンインフラストラクチャーの定義は他国と変わることはないと思います。集中豪雨の多いところでは洪水対策に重点が置かれ、メルボルンのように暑くなってきた都市では高温対策がより重要視されます。日本なら地震や津波に対する対策も必要かもしれませんね。メルボルンにおける重要なグリーンインフラ政策がアーバンフォレスト戦略と言えます。