「切断された根系直径と発根量の関係 および太根切断箇所の処置方法に関する研究」 (続報)
一般社団法人 街路樹・都市樹木診断協会 技術委員会は、海外の根系保護範囲(CRZ:Critical Root Zone)や樹木保護範囲(TPZ:Tree Protection Zone)の事例を踏まえつつ、日本の状況に即した現実的な根系の保護方法や、根を切断する場合の処置方法を検討するため、2021年1月から、「切断された根系直径と発根量の関係 および太根切断箇所の処置方法に関する研究」を行っています。
都市樹木の根は、埋設物の設置などにより切断されることがあり、その切断面から根株が腐朽し、倒木の一因となっている事例もあります。
埋設管や標識類の基礎コンクリートなどが狭小空間に併設される日本の街路・公園状況では、太根切断はやむを得ない場合があり、根系の切断後の経過やその処置方法についての調査研究は必須ですが、根の切断面直径と発根量の関係を示す報告はこれまで見受けられず、太根切断箇所の処置方法は確立されていなため、技術委員会では、切断された根系直径と発根量の関係を確認するための調査と、太根を切断した際にどのような処置を講じればよいかを確認する試験を継続しています。
今回は、2つのテーマについて続報をお知らせします。
【研究の経過】
- 根系切断の許容直径調査(2021年1月15日)
- 太根切断箇所の処置方法(「切断された根系直径と発根量の関係および切断箇所の処置方法」)
試験区設定(2021年2月24日)
掘り上げ調査(2022年1月25日・26日)
樹木医学会第27回大会にて研究発表(2022年12 月4 日)
樹木医学研究27巻3号速報掲載
根の切断面への塗布剤の種類と発根量の関係
樹木医学会第28回大会にて研究発表(2023年12月10日)、樹木医学研究28巻4号速報掲載
本研究は、都市樹木の根切断後に発生する腐朽や倒木リスクを軽減するため、切断面への処理剤が発根量に与える影響をシラカシとクスノキで比較したものである。根を切断後、トップジン、カルスメイト、木工ボンド、無処理の 4 区を設定し、約 8 か月後に切断面からの発根数を測定した。

| 樹種 | トップジン | カルスメイト | 木工ボンド |
| シラカシ | 無処理より有意に多い | 無処理と差なし | 無処理より有意に多い |
| クスノキ | 無処理より有意に多い | 無処理と差なし | 不安定 (個体差大) |
シラカシ・クスノキともにトップジンが最も高い発根促進効果を示した。シラカシでは木工ボンドにも効果が認められた。
一方で、クスノキでは木工ボンドの結果が安定せず、樹種との相性が課題として浮上した。
さらに、塗布剤処理区では根の直径が大きいほど発根量が多い傾向が確認されたが、無処理区では直径による差は小さかった。
本研究は、切断根の発根促進にはトップジンが有効であること、そして適切な切断面処理が重要であることを示している。
論文はJ-STAGEでご覧いただけます。 https://doi.org/10.18938/treeforesthealth.28.4_216
真砂土における切断された根系直径と発根量の関係および切断箇所の処置方法
その後、「真砂土における切断された根系直径と発根量の関係および切断箇所の処置方法」について、2024年11月17日に樹木医学会第29回大会にて研究発表を行ったので、その要旨をお知らせします。 (樹木医学研究29巻4号速報掲載)
本研究は、都市樹木の根切断後の腐朽や倒木リスクに対し、切断面処理が発根量に与える影響を真砂⼟条件で検証したものである。大阪府の圃場に植栽されたシラカシ 2 本、クスノキ 2 本を対象に、切断根をトップジン、木工⽤ボンド、無処理の 3 区で比較した。
結果、個体間で処理効果に差がみられ、シラカシ①とクスノキ④では処理の有無による違いは認められなかった。
一方、クスノキ②ではトップジンおよび木工⽤ボンドが無処理より発根数が多く、シラカシ③ではトップジンが木工⽤ボンドより有意に発根が多かった。しかし全体として発根数は 0〜1 本程度にとどまり、関東ロームで得られた既往研究の結果、(トップジン等で発根増加)とは異なった。
真砂⼟の性質や傾斜地の影響により⼟壌条件が均一でなかったことが、結果のばらつきの要因と推察された。
| 樹種・個体 | 無処理 | トップジン | 木工⽤ボンド | 傾向 |
| シラカシ① | 差なし | 差なし | 差なし | 全区で発根極少(中央値 0) |
| クスノキ② | 最も少ない | 有意に多い | 有意に多い | 発根は 0〜1 本程度 |
| シラカシ③ | 中程度 | 最も多い | 少ない | トップジンが有意に多い |
| クスノキ④ | 差なし | 差なし | 差なし | 全区で発根極少(中央値 0) |


トップジン処理したシラカシ 左:関東ローム 右:真砂⼟




